BREAK THROUGH
4、その後の考え方の変化(31〜36)
その1
業務委託としてデザイナーを始めた。
とは言っても最初はフルタイムの出勤ではなかったので、結構暇な生活でした。
週4日は休みだったもんな。
リサーチがてらいろんなお店に行っては、商品を見たり試着したり。
そこである事に気がつく。
「僕の欲しい(いけてると思う)商品はほぼ100%セールになる。」
そういうことか。
僕の好きなものは人気がないのか。
ということは、一生懸命死に筋を作っていたのか。
ここで、僕は自分が自分の為に行うデザインに向いてない事に気がついた。
要するに、アーティスト肌では無かった。
そこで業務委託の仕事では完全に割り切って仕事を行う事にした。
市場があって、そこに何を提供するのか、同じ商品でも新しい見え方は何なのか、変えてはいけないポイントはどこなのか、など。
それはそれでとても面白かった。
なんせ、自分の企画した商品がノーリスクで1000枚単位で生産されていく。
今まで感じたことのない楽しさがあった。
他の商社とコンペになって勝ち取ったダウンジャケットとか、
今まで必死こいて20枚前後の商品を売っていた自分は何だったんだ?と考えたりもした。
逆に言うとこの単位の仕事はかなりリスクが高いので、決まったはいいもののプレッシャーも半端じゃなかった。
*ダウンは何万枚とかそういう数字。
もちろん自分の好きなテイストのものばかりでは無かったが、作る時の脳の使い方が違ったので、あまり気にはならなかった。
またここで面白かったのが、洋服好きということが幸いした。
デザインテイストやテーマを伝えてもらえたら、なんとなくコーディネートや商品のデザインが浮かぶのだ。
そしてそれを反映させていく。
これは広く知識を持っておいた事でできた仕事だった。
また、もう一つ良かったのが孤独ではなかったところだ。
ドメスティックブランドを展開している人なら(多分)わかって頂けると思うのだが、
とても孤独な仕事だ。
デザイン、営業、生産、プレス、運営の全ての意思決定を一人で行う必要がある。
実際のところこれはマジできつい。
相談など、悩みを打ち明けられる人がいない。
また、自分の作った商品を自分で売り込むと言うのは否定的な意見も受け止めなくてはならない。
それが誰かとできただけでも仕事が楽しくなった。
出張も多かったので移動中などいろんなビジネス関連の本を読んでみることにした。
そこで今でも覚えているのが
「好きなことをを仕事にするのは難しい。100万円でも欲しいという人と、タダでもいらないという人が同時に顧客となるからだ。」
という言葉である。
極端だと思うが、これはかなり言い得ている。
特にファッションの分野においては、嗜好品と生活必需品の棲み分け方がとても難しい。
むしろ嗜好品の割合が多く、世間のムードやトレンドにかなり左右される。
よって、仕事が平均化しづらい。
ただ、時代によって浮き沈みはあるものの完全に無くなる仕事ではないという意識も持てた。
このタイミングで読んだ本からは社長の仕事についても学んだ。ズバリ
「会社を継続し続ける事。」
それは世の中に提供できるサービスを時代に応じて変化させる事であり、自己満足だけでは成り立たないという事である。
必要とされ続ける事を考える仕事なのだ。
確かにそれまでは自分の事ばかり考えていたように思う。
そう思えたら休眠会社を選ばなかった事に意味が見出せた。
この言葉は今でも自分の指針となっている。
この業務委託では、自分に向いている仕事の仕方を学んだ。
また、自分がどういう人間で何に興味があるのかを客観的に見る事ができた。
デザイナーとして3年目に突入したあたりに、また新たな出会い(再開)が更に人生を変えていく事になる。
それはまた次回。
その2でお会いしましょう。